ヴィンシャーマン&ドイツ・バッハ・ゾリステンによるバッハのオーボエとヴァイオリンのための協奏曲を聴いて
ヴィンシャーマン&ドイツ・バッハ・ゾリステンによるバッハのオーボエとヴァイオリンのための協奏曲(1962年録音)を聴いてみました。
オーボエ独奏はヴィンシャーマン自身、ヴァイオリン独奏はゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル。
堅実さと、ロマンティシズムとを兼ね備えた演奏となっています。それは、1960年代のモダン楽器によるバッハ演奏としてはオーソドックスな演奏ぶりであると言えましょう。そのうえで、頗る充実度の高い音楽が奏で上げられている。
真摯で、どっしりとした構えをしていて、平衡感覚に優れた演奏だと言えそうで、しかも、滑らかで流麗でもある。メロディアスな魅力を湛えてもいる。そう、「滑らかで流麗」というところが、リヒターやミュンヒンガーとは、大きく異なる。それほどまでに厳粛な雰囲気が漂ってもこない。
古楽器による演奏を知ってしまった現代人の耳からすると、厚化粧なバッハ演奏だと言わざるを得ないでしょう。しかしながら、鋭角的な演奏ぶりとは対極にある、まろやかで艶やかな演奏にも抗いがたい魅力を感じます。
しかも、単にムードに流されないコクの深さを備えてもいる。それは、ヴィンシャーマンの誠実さと、バッハへの愛情とによって生み出されたものなのではないでしょうか。知情のバランスに優れているとも言いたい。
なんとも素敵なバッハ演奏であります。そして、この作品の魅力を存分に味わうことのできる演奏となっています。