ロジェによるドビュッシーの≪映像≫の第1,2巻を聴いて

ロジェによるドビュッシーの≪映像≫の第1,2巻(1979年録音)を聴いてみました。

繊細にして、儚さのようなものが感じられる演奏であります。そう、とてもデリケートな音楽が紡ぎ上げられている。
全編を通じて、透明感が感じられます。詩情に溢れている。夢幻的でもある。冴え冴えとした演奏だとも言いたい。
そのような音楽づくりをベースにしながら、微妙な色彩の変化が、精妙に描き出されてゆく。
透徹した音楽世界が広がってゆく演奏。ドビュッシーのピアノ独奏曲は、元来がそのような性格を持っていると言えそうですが、ここでのロジェによる演奏は、そのような性質が殊のほか強いように思えます。
そして、儚いながらも、決してひ弱な演奏であるとも言えそうにありません。むしろ、芯のシッカリとした演奏であると言いたい。それは、ドビュッシーの音楽世界に対してロジェが抱いている「確信」を裏付けとしながら、奏で上げられているが故なのではないでしょうか。
更に言えば、キリっとした表情を湛えていて、凛々しくもある。贅肉や、脂身といったものが、感じられることは全くない。そんなこんなによって、精妙にして、ピュアな美しさを湛えた音楽が鳴り響いています。
聴いていて、心洗われる思いが込み上げてもくる。

ロジェの美質が、クッキリと刻まれている演奏だと言えましょう。
そのうえで、ドビュッシーのピアノ作品の魅力にドップリと身を浸すことのできる、なんとも素敵な演奏となっています。