プレヴィン&フィラデルフィア管によるR・シュトラウスの≪アルプス交響曲≫を聴いて
プレヴィン&フィラデルフィア管によるR・シュトラウスの≪アルプス交響曲≫(1983年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。
プレヴィンがフィラデルフィア管を指揮している、珍しい1枚。
さて、ここでの演奏はと言いますと、プレヴィンらしい堅実さと、フィラデルフィア管による華麗な響きが相乗効果を上げている、素敵なものとなっています。
プレヴィンの音楽づくりは、堅実であるとともに、ストーリーテラーとしての巧みさを持っていると思えます。とりわけ、下山の場面では、誠にダイナミックでスリリングに描かれていて、そのような側面を強く実感できる。また、前半部分での山を登っていく場面では、それぞれの光景が明瞭に描かれてゆく。
しかも、そのような描写が、決して大袈裟なものになっていない。じっくりと音楽を語っていく、といった形になっていると言いたい。そのうえで、この作品が備えている物語性や、絵画性を、クッキリと描き上げている。そんなふうに言えるように思えます。そのため、例えば、登り路で描かれる滝のシーンは、見事な水しぶきを上げている。また、下山後の夜の場面では、敬虔さの強い音楽となっている。
そのようなプレヴィンの指揮に対して、フィラデルフィア管は、艶やかで、かつ、煌びやかな響きを前面に押し出しながら、巧緻な合奏で、プレヴィンの音楽づくりに見事に応えてくれている。それがまた、この作品の絵画性を高めてくれていると言えそう。
プレヴィン&フィラデルフィア管の美質がクッキリと刻まれている、聴き応え十分で、頗る魅力的な、素晴らしい演奏であります。