ヨッフム&バイエルン放送響によるモーツァルトの≪グラン・パルティータ≫を聴いて
ヨッフム&バイエルン放送響(BRSO)によるモーツァルトの≪グラン・パルティータ≫(1962年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音源での鑑賞になります。
ヨッフムならではの、真摯な演奏が展開されています。
そのうえで、なんとも美しい演奏となっている。それは、響きにおいても、音楽の佇まいにおいても。暖かみに溢れていて、なおかつ、凛としてもいる。
まずもってクラリネット属(クラリネットとバセットホルン)の音の、なんと美しいこと。芯がシッカリとしていて、しかも、まろやかで、艶やかな音がしている。その音に浸っているだけで、心がとろけそうになります。この曲は、オーボエよりもクラリネット属が主役を務める場面が多い。そして、クラリネットとバセットホルンとの掛け合いが至るところで繰り広げられる。それだけに、ここでのクラリネット属の演奏の素晴らしさは、なんとも嬉しい限りであります。
しかも、ヨッフムによるケレン味のない音楽づくりが、実に素晴らしい。音楽の隈取りが頗る鮮やかで、明朗な演奏が展開されています。浮ついたところがないのですが、音楽は充分に溌剌としている。推進力に溢れている。ふくよかにして、音楽全体が弾んでいる。そして、愉悦感に満ちている。それでいて、ときに一抹の憂愁が漂う。それらはすなわち、モーツァルトを聴く歓びに直結するものだと言いたい。
この作品の音楽世界にドップリと身を浸しながら、作品の魅力を堪能することのできる演奏。そして、ヨッフムの音楽への誠実な態度と、BRSOの管楽セクションの充実ぶりがクッキリと刻まれている演奏。
そして、飾り気がないうえで、とても典雅な音楽が鳴り響いている。
いやはや、なんとも素敵な演奏であります。
なお、この演奏では、コントラバスではなくコントラ・ファゴットが使われています。