カイベルト&シュターツカペレ・ドレスデンによるマーラーの≪巨人≫を聴いて
カイベルト&シュターツカペレ・ドレスデン(SKD)によるマーラーの≪巨人≫(1950年ライヴ)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。
カイルベルトらしく、堅固で、ちょっぴり無骨な演奏が繰り広げられています。どっしりと構えた演奏となっている。そして、とてもシリアスでもある。その分、マーラー特有の「官能」は薄いような気がします。
その一方で、SKDの響きは、ここでも頗る柔らかくて優美。匂い立つような気品が感じられ、薫り高い音楽が鳴り響くこととなっています。そのうえで、この演奏に、端正な佇まいを与えてくれている。カイルベルトの武骨な演奏ぶりに、しなやかさを加えてくれることとなってもいる。
そのような中で、最終楽章では、総じて推進力に満ちた演奏が展開されてゆく。また、この楽章の前半をちょっと行ったところ、175小節目からの”Sehr gesangvoll”(たっぷりと歌って)と表記された箇所では、頗る甘美な歌に包まれた演奏が繰り広げられている。それは、曲想に寄り添いながら、自在なアゴーギクを効かせたものとなっていて、官能美も素晴らしい。作品全体に対する、大きなアクセントになっています。
全体的には、いかにもドイツのマーラーといった風情が漂ってくる演奏。そこに、SKDならではの馥郁とした響きが添えられる。
聴き応え十分な、素敵な素敵な演奏であります
なお、モノラルでのライヴ録音でありますが、とても鮮やかな音質をしているのに驚かされます。
この演奏を楽しむにあたって、なんらの支障も感じられません。