モントゥー&ロンドン響によるラヴェルの≪マ・メール・ロア≫全曲を聴いて

モントゥー&ロンドン響によるラヴェルの≪マ・メール・ロア≫全曲(1964年録音)を聴いてみました。


これは、モントゥー(1875-1964)が、この世を去ることとなった年に録音されたもの。
実に明快な演奏であります。音の線がクッキリとしている。色彩の明瞭さが感じられる。そして、明るい雰囲気をもっていて、演奏全体が朗らかでもある。
そのうえで、この作品が持っているメルヘンチックな愛らしさや、優しさや、晴れやかさや伸びやかさにも全く不足がない。
ところで、モントゥーは「万年青年」と呼べるほどに、最晩年になっても覇気に溢れていて躍動感に満ちた、若々しい演奏を繰り広げてくれた指揮者であると見なしています。そこへゆくと、この演奏は、温厚なお爺さんが、滑舌良く、そして暖かく、物語を聞かせてくれているような趣きが感じられます。
それでいて、彩りが鮮やかで、明るくて柔和な音楽づくりの先に、若々しい「輝かしさ」が感じられる。暖かいながらも、清新で冴え冴えとした、キリっとした音楽づくりが為されてもいる。この辺りが、いかにもモントゥーらしいところだと言えましょう。

このチャーミングな佳曲の魅力を堪能することのできる、しかも、モントゥーの柔和で温厚でいて若々しくもある感性に触れることのできる、素敵な演奏であります。