ムター&カラヤン&ベルリン・フィルによるメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲を聴いて
ムター&カラヤン&ベルリン・フィルによるメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲(1980年録音)を聴いてみました。
ムターは1978年2月、14歳であったときにカラヤンとのモーツァルトの協奏曲でレコーディングデビューを果たしていますが、これは、その2年7ヶ月後の録音。
なるほど、ここでのムターは、カラヤンの枠の中で音楽を奏でていると言えるかもしれません。しかしながら、物怖じすることなく、堂々としている。屈託がなく、率直な音楽となっている。そう、とても伸びやかであると思えるのです。そして、覇気に満ちている。
そのうえで、気魄を激しくぶつけてきている。頗るエネルギッシュであり、かつ、濃密な音楽が奏で上げられています。
更に言えば、何とも艶やかな音楽となっている。それは、響きにおいても、音楽全体の印象においても。そのため、この作品の特徴とも言える「ロマンティシズム」が、色濃く薫ってくる。それも、過剰にケバケバしくならない範囲で。
また、第2楽章を中心に、抒情的な美しさや、繊細さを備えてもいます。とりわけ、第2楽章が閉じられる直前での、弱音を駆使しながらの儚げな表現は、グッと心に沁み渡る。
そのようなムターをバックアップするカラヤンの音楽づくりは、実に堂々としたもの。恰幅の良い演奏ぶりであり、豊饒な音楽となっています。
そのうえで、カラヤンならではの滑らかさがある。とても艶やかでもある。そして、ドラマティックで、かつ、ロマンティックもある。
現在の音楽界において「ヴァイオリンの女王」とも称されているムターの、若き日の熱演が刻まれている当盤。しかもここでは、浮ついたところのない、気魄の籠った演奏を目の当たりにすることができる。
聴き応え十分な、素敵な演奏であります。