ヨッフム&ボストン響によるモーツァルトの≪ジュピター≫を聴いて
ヨッフム&ボストン響によるモーツァルトの≪ジュピター≫(1973年録音)を聴いてみました。
ッフムとボストン響との録音って、珍しいですよね。正規録音は、この音盤に収められている≪ジュピター≫と≪未完成≫のみのはずです。
その演奏はと言いますと、質実剛健で、かつ暖かみのあるものとなっています。全体的にキビキビとしていて、キリリと引き締まっていながら、充分に潤いがある。毅然としていて、凝縮度が高くて凛としていて、それでいて、過不足のない華やかさや壮麗さがある。第2楽章などでは、憂愁が漂ってもいる。
凝縮度の高さや、凛とした表情は、ボストン響の体質が大きく影響しているように思えます。音そのものの芯がシッカリとしていて、かつ、まろやかであるのも、ボストン響ならでは言えそう。更には、響きに結晶度の高さのようなものが感じられる。
そのうえで、ヨッフムの音楽づくりは、息遣いがとても自然。柔らかみが感じられつつも、力感に満ちている。生き生きとしていて、伸びやかで、晴れやかでもある。そう、とても壮健な音楽となっているのであります。そんなこんなが、この作品の性格にピッタリ。
ただただ、誠実に音楽を奏で上げながらも、逞しい生命が息づいていて、内側で情熱の炎が燃えているような演奏となっている。そして、佇まいは、美しくて、立派。
ズシリとした手応えのある、充実度の高い演奏。しかも、親しげで、人間味に溢れている。
なんとも素敵な演奏であります。
なお、レコーディングデータを見ますと、1973年1月26,27日の録音となっています。
モーツァルトの誕生日が1/27で、シューベルトの誕生日が1/31。ひょっとするとヨッフムは、ボストン響のコンサートで1/27には≪ジュピター≫を、1/31には≪未完成≫を演奏し、それに合わせて、この音盤を制作したのでしょうか。そんな空想を起こさせてくれるデータであります。