インバル&フィルハーモニア管によるストラヴィンスキーの≪ペトルーシュカ≫を聴いて

インバル&フィルハーモニア管によるストラヴィンスキーの≪ペトルーシュカ≫(1990年録音)を聴いてみました。

精緻であり、かつ、スッキリと纏め上げられた演奏が展開されています。とても見通しが良くもある。更には、美麗な演奏となっている。
しかも、力感にも不足はない。決して大袈裟に掻き鳴らすのではなく、整然と音楽を奏で上げてゆくなかで、立体的かつ躍動感のある演奏に仕上げられている、といった感じ。必要十分な生気や劇性の備わっている演奏となっています。そういったところが、いかにもインバルらしいと言えましょう。
なるほど、聴いていてスリルを感じるような要素は殆どありません。その代わりに、安心して作品の世界に身を浸すことのできる演奏となっている。更に付け加えると、作品を磨き上げることに渾身の力を注いでいる演奏、だとも言いたくなる。それ故に、とても美しい音楽が鳴り響くこととなっている。この辺りもまた、インバルならではの音楽への接し方だと言えましょう。
そんなこんなのうえで、派手にならない範囲で作品が持っている色彩感が表出されていて、必要十分にキラキラと輝いてもいる。

このようなタイプの演奏で聴くストラヴィンスキーも、なかなかに興味深いものであります。特に、精緻な演奏スタイルが作品の性格に合致すると言えそうな≪ペトルーシュカ≫だと、その感は殊更に強くなる。
ユニークな魅力に触れながら、この作品の魅力をタップリと味わうことのできる、素敵な演奏であります。