ゲルギエフ&ロンドン響によるマーラーの交響曲第6番≪悲劇的≫を聴いて

ゲルギエフ&ロンドン響が制作したマーラーの交響曲全集から第6番≪悲劇的≫(2007年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

ゲルギエフは、エネルギッシュにしてドラマティックで、野性味を感じさせてくれる演奏を展開する指揮者だというイメージが強いのではないでしょうか。しかしながら、この演奏は随分と洗練されているように感じられます。荒々しさが前面に出ておらずに、折り目正しくて、精密で、克明な演奏となっている。
こういった特徴は(それは、ある種のモデルチェンジだとも言えそう)、2000年頃を境にして見受けられるようになり、2007年にロンドン響のシェフに就任した辺りで顕著になったように思えます。その点で、ロンドン響のシェフに就任した初年度に録音された、このマーラーの6番も、ロンドン響時代のゲルギエフらしい演奏だと言えましょう。
急速楽章では、速めのテンポを基調としながら、テキパキと進められてゆく。整然としていて、スタイリッシュな演奏ぶりだと言えそう。そのうえで、推進力に富んだ演奏が繰り広げられている。そういったこともあり、耽美的であったり、ドロドロとしていて情念的であったり、といったマーラー演奏とは一線を画したものになっています。
その一方で、アンダンテ楽章でも、やや速めのテンポによって進められ、粘るようなことは皆無でありつつも、情緒連綿とした音楽が奏で上げられています。サラリとした抒情性、といったものが漂ってもいる。しかも、この楽章の終盤近くになると、激情性を帯びてくる。そういった演奏ぶりによって、急速楽章とのコントラストが明瞭に付けられることとなっている。
なお、ここでの中間楽章は、1990年あたりから頻繁に採り入れられるようになった、アンダンテ→スケルツォの順で演奏されています。
とは言うものの、全楽章を通じて、ダイナミックな表現が採られています。とりわけ、最終楽章の後半では、昂揚感の高い音楽が鳴り響いている。この辺りは、いかにもゲルギエフらしいところ。どんなにスッキリとした音楽づくりが為されていても、アグレッシブである。そして、切れ味の鋭さを備えたものとなっている。そのうえで、洗練味が感じられるのであります。そんなこんなによって、見目麗しいマーラー演奏が出現することとなっている。

2000年以降の「モデルチェンジ」した後のゲルギエフの特徴が加味されている、ユニークな魅力に包まれたマーラー演奏。そんなふうに言いたくなります。
快演だと言えましょう。