ミュンシュ&ボストン響によるベートーヴェンの≪英雄≫を聴いて
ミュンシュ&ボストン響によるベートーヴェンの≪英雄≫(1957年音)を聴いてみました。
豪壮にして、明快を極めたベートーヴェン演奏が繰り広げられています。速めのテンポでキビキビと進められてゆき、得も言えない爽快感を覚える。
あまりグラマラスな演奏ぶりにはならずに、キリッと引き締まった演奏が展開されています。他の多くのミュンシュによる演奏で見られるような、灼熱の情熱が迸る音楽が奏で上げられている訳ではありません。そう、必要以上に熱くなったり、力任せになったりするようなことはない。とても端正な演奏となっている。そのうえで、毅然とした佇まいをしてもいる。竹を割ったような明快さが備わってもいる。
それはもう、小難しいところの全くない、ストレートな演奏が繰り広げられています。見通しがスッキリ。身のこなしがしなやかでもある。そのうえで、必要十分に輝かしく、歌心に満ちていて、何から何までが晴れやかでもある。
更に言えば、この作品が持っている気宇の大きさも十分に示されている。ベートーヴェンならではの、エネルギッシュでダイナミックな性格にも不足はない。しかも、それらが自然な形で示されている。そして、運動性の高さが感じられもする。
胸のすくベートーヴェン演奏。聴後の充実感も頗る高い。
なんとも天晴れな演奏であります。