クリュイタンス&パリ音楽院管によるベルリオーズの≪幻想≫(東京ライヴ)を聴いて
クリュイタンス&パリ音楽院管によるベルリオーズの≪幻想≫(1964/5/10 東京文化会館ライヴ)を聴いてみました。
こんなにもエレガントな≪幻想≫を、私は他に知りません。
この演奏を初めて聴いたのは、当盤が初出された1986年のこと。この「伝説の演奏」がCD化されることを知り、発売と同時に購入したのでした。そして、この演奏を聴いて私は初めて、この作品はフランスの作曲家によって生み出された音楽なのであるということを実感したものでした。
馥郁とした薫りの立ち込める、エレガントな演奏。瀟洒で、洗練された音楽が鳴り響いています。品格の高さが感じられ、かつ、理知的で機知に富んだ演奏だとも言いたい。艶やかな光沢をしていて、しかも、肌触りが滑らかでもある。
その一方で、とても鮮烈な演奏でもあります。至る所で、音楽は爆発している。しかも、急速な箇所では猛烈な勢いで奏で上げられてゆく。そのようなこともありまして、これ以上考えられないほどの奔流が、ここにはある。
しかしながら、それらの爆発や奔流は、決して凶暴なものではない。少なくとも、私にはそのように思えます。美感を充分に保ちながら、豊潤な音楽として鳴り響いている。更には、決してケバケバしくはないものの、色彩鮮やかでもある。
驚くべき演奏だと言えましょう。そして、このような演奏が、我が国で奏で上げられたのだということが、なんとも誇らしい。
美しくて、かつ、鮮烈な、奥行き感のある演奏。なんとも素晴らしい演奏であります。
私にとっては、≪幻想≫の圧倒的なマイベスト盤であります。