小澤さん&パリ管によるストラヴィンスキーの≪火の鳥≫全曲を聴いて

小澤さん&パリ管によるストラヴィンスキーの≪火の鳥≫全曲(1972年録音)を聴いてみました。

これは、小澤さんが37歳になる年の録音になりますが、瑞々しい感性に溢れた演奏が展開されています。真っすぐな音楽づくりが為されていて、胸のすくような鮮やかさがある。その様が、なんとも痛快。
更には、まばゆいばかりに色彩感溢れている演奏だとも言えましょう。煌びやかで、華麗な演奏が繰り広げられている。音がキラキラと輝いている。そして、鮮烈極まりない。
これらのことは、小澤さんの水際立った音楽づくりに依るところもさることながら、パリ管あってのことだとも言えましょう。それはもう、色彩鮮やかな音たちが戯れている、とでも言いたくなるような演奏となっています。なんともヴィヴィッドな音楽が鳴り響いている。
その一方で、小澤さんならではの堅実さや折り目正しさや、繊細さ抒情性の豊かさや、といったものを感じさせてくれる演奏となっている。そのうえで、弾けた感覚を併せ持った音楽が奏で上げられているのであります。演奏全体が、実にしなやかで、生彩感に富んでいる。何から何までが生き生きとしている。
そういったことに加えて、表情は頗る濃密。起伏に富んでいて、ドラマティックな演奏が展開されている。そして、スリリングでもある。

この頃(1960年代の後半から70年代の初頭にかけて)の小澤さんは、実に生き生きとした、そして、シャープな感覚に満ちた演奏を繰り広げてくれていました。その中でも、この≪火の鳥≫は殊のほか魅力的な存在であると、私は思っています。
若き日の小澤さんの、血気盛んにして、率直でありつつも丹念な音楽づくりが冴え渡っている演奏。そこに花を添えてくれているパリ管がまた、なんとも素敵。
そんなこんなが相まっての、格別な魅力を備えている演奏であります。