リヒテル&カルロス・クライバーによるドヴォルザークのピアノ協奏曲を聴いて

リヒテル&カルロス・クライバー&バイエルン国立管によるドヴォルザークのピアノ協奏曲(1976年録音)を聴いてみました。

熱い血潮の燃え滾っている演奏であります。そして、眩いまでの輝きを発している演奏となっている。とても強靭でもある。これらのことは、リヒテルの演奏ぶりにも、クライバーの演奏ぶりにも当てはまりましょう。
リヒテルも、クライバーも、もともとが、熱いパッションと、大いなるロマンティシズムとを持っている演奏家であると、私は思っています。そのような気質がストレートに現れている演奏。そんなふうに言えるのではないでしょうか。
そのこともあって、音楽がうねりにうねっている。全編を通じて、怒涛の推進力を持つ演奏となっている。その生命力たるや、誠に逞しい。そして、音楽が生き生きと、ドラマティックに、かつ、しなやかに波打っている。そのうえで、リリカルな美しさを秘めている音楽となっている。随所で、夢見るような憧れの表情、といったものが感じられもする。

この作品、演奏される機会は少なく、音盤の数もあまり多くはありません。それは、やや散漫な音楽となっているというところに理由があるのでしょう。しかしながら、この演奏では、非常に集中度の高い音楽として提示されているように思えます。情感豊かであるうえに、野太さと洗練味とを併せ持っている音楽として聞こえてもくる。
この作品の魅力を存分に味わうことのできる、素晴らしい演奏であると思います。