フリッチャイ&ベルリン・フィルによるメンデルスゾーンの≪真夏の夜の夢≫抜粋を聴いて
フリッチャイ&ベルリン・フィルによるメンデルスゾーンの≪真夏の夜の夢≫抜粋(1950年録音)を聴いてみました。序曲を含めて9つのナンバーが演奏されています。ソプラノ独唱を務めているのはシュトライヒ。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。
フリッチャイ(1914-1963)が36歳の年に録音した、この演奏。フリッチャイによる正規録音でのメンデルスゾーンは、シュナイダーハンと共演したヴァイオリン協奏曲を除くと、これが唯一のものとなりましょう。その意味で、とても貴重な記録だと言えそうです。
さて、フリッチャイによる演奏は、強靭で筋肉質な音楽づくりをベースにしながら、峻厳でストイックな音楽を奏で上げてゆくといったスタイルが多いように思うのですが、ここではそのような様子は薄い。ふくよかさを備えた演奏が繰り広げられています。
とは言いましても、夢幻的であったり、甘さや艶やかさを前面に押し出したり、といった演奏にはなっていないのが、フリッチャイらしいところ。ふくよかさを保ったうえで、キリっとしていて、明晰な演奏が繰り広げられています。情に流されるようなところがなく、毅然とした演奏となっている。
そのうえで、適度にスケールの大きさが感じられます。凝縮度が高かったり、頑健であったり、といった演奏ぶりと言うのとは少々異なるのですが、充実度の高さや、輝かしさが備わっている。
そのようなフリッチャイの音楽づくりの中で、シュトライヒが持ち前の可憐でチャーミングな歌を聞かせてくれているのが、この演奏に素敵な花を添えてくれている。
聴き応え十分で、独特の魅力を備えている≪真夏の夜の夢≫であります。