フランソワによるショパンの≪24の前奏曲≫と≪即興曲集≫を聴いて
フランソワによるショパンの≪24の前奏曲≫と≪即興曲集≫(1959年録音)を聴いていました。
闊達で、かつ、起伏の大きな演奏だと言えましょう。
なるほど、現代のピアノ演奏や、或いはポリーニやアルゲリッチなどの演奏と比べると、キレのある演奏だとは言えないでしょう。とは言え、決しておっとりしている訳でもない。かなりアグレッシブであると思います。鬼気迫るような様相も見て取れる。過度ではないのですが、奔放であり激情的でもある。そのうえで、骨太なショパン演奏と言えそうな音楽が奏で上げられている。
そのような姿勢での音楽づくりを基調としながら、暖かみが感じられ、更には洗練された薫り高さのようなものが感じられる演奏となっています。しかも、甘えたところがなく、ストイックだとも言えそうなのですが、ショパンならではの詩情も伝わってくる。決して甘ったるい詩情ではなく、キリリと引き締まった詩情、とでも形容したくなるようなものが。その結果として、エレガントで、オシャレな感覚が漂ってくることとなってもいる。
そんなこんなのうえで、時に瞑想的な表情を見せたりもする。夢想的な表情を見せることもある。ショパンらしい哀愁が漂ったりもする。それらの表現の幅の中に、感性の迸りのようなものが感じられもする。
個性的であり、粋であり、かつ、豊かな音楽性を備えた演奏。
聴いていてグッと惹きつけられる、なんとも素敵なショパン演奏であります。