ケンペ&シュターツカペレ・ドレスデンによる≪ツァラトゥストラかく語りき≫を聴いて

ケンペ&シュターツカペレ・ドレスデン(SKD)によるR・シュトラウスの管弦楽曲全集から≪ツァラトゥストラかく語りき≫(1973年録音)を聴いてみました。

SKDはR・シュトラウスの作品の多くを初演しているオーケストラ。特に、オペラ作品においては、9作品を初演しています。伝統的に、R・シュトラウスの音楽の書法に精通しているオーケストラ、と言えるのではないでしょうか。
そのようなSKDの音楽監督を1949-53年の4シーズンにかけて務めたケンペによる、この管弦楽曲全集。R・シュトラウスの管弦楽曲を聴きたくなったときに、しばしば棚から取り出してくる愛聴盤となっています。

さて、ここでの≪ツァラトゥストラかく語りき≫についてであります。
端整であり、格調が高くありつつも、充分に華麗な演奏となっています。そのうえで、力感に不足はなく、音楽が随所でうねっている。
この作品は、冒頭部分の壮麗な音楽がクローズアップされがちであると言えましょう。それは、ある種、芝居がかった音楽であるとも言えそう。映画「2001年宇宙の旅」で使用されていることが、このような印象を増幅しているようにも思えます。それでいて、このモチーフは、冒頭部分で奏で上げられた後は、第1部のエンディングでほんの少しだけ姿を現すだけなのであります。そのようなこともあり、何と言いましょうか、取ってつけたような印象を抱かせもする。
さて、その冒頭部分についてでありますが、この演奏では殊更に強調されている訳ではありません。もったいぶった壮麗さが示されている訳でもありません。むしろ、スッキリと奏で上げられている。それはまさに、序章と言うに相応しい雰囲気を持った音楽となっている。音楽は、これ以降が本番、と言わんばかりであります。
そして、冒頭部分が終わって主部に入ってからと言うもの、この演奏は、壮麗を極めたものとなっている。音楽がうねりにうねってもいる。と言いつつも、決して芝居がかっていたり、こけおどしな音楽になっていたり、という訳ではありません。音楽は常に、凛とした佇まいを示してくれている。薫り高い音楽となっている。そして、誠に美しい音楽世界が広がっている。これらのことは、SKDの美質が最大限に発揮されている結果であるとも言えそう。

徹頭徹尾、充実感に満ちていて、美しさに溢れている演奏。
いやはや、実に素敵な演奏であります。