ヘンゲルブロック&北ドイツ放送響によるシューベルトの≪ザ・グレート≫を聴いて

ヘンゲルブロック&北ドイツ放送響によるシューベルトの≪ザ・グレート≫(2012年録音)を聴いてみました。
図書館で借りたCDでの鑑賞になります。

清新にして、壮麗でもある演奏となっています。しかも、ニュアンスの細やかさを持ってもいる。
基本的に速めのテンポを採りながら、キビキビと進めてゆく。厚化粧を施さずに、歩みは颯爽としている。
ヘンゲルブロックは、フライブルク・バロック・オーケストラを創設して指揮者を務めるなど、古楽器による演奏に精通していることにも依るのでしょう、響きが肥大化するようなことはなく、筋肉質であります。それでいて、充分に輝かしい。そして、音楽の構えを大きく採り、この作品に相応しい気宇の大きさが備わっている。活力が漲っていて、逞しくもある。その気宇の大きさや、逞しさも、決して誇張されたものではなく、この作品が持っている生命力を率直に解放してあげた結果、といった感じ。
しかも、第1楽章でも、第2楽章でも、第2主題でテンポをガクッと落として、音楽に影を与えている。テンポの落差は相当なものとなっているのですが、この作品が備えている「呼吸感」のようなものが損なわれることはない。そのうえで、颯爽とした歩みに、ロマンティックにして感傷的な色合いを与えてくれることとなっている。
なお、古楽器系の指揮者らしく、全てのリピートを敢行しています。そのために、演奏時間は61分を超える。それでいて、長さが少しも感じられない。それは、作品の息吹を十全に表してくれていることなどに依る演奏の充実度の高さと、各所に施されている「仕掛け」ゆえなのではないでしょうか。また、曲の最後は、記譜されている「>」をディクレッシェンド見なして演奏している点も、古楽器系の指揮者らしい措置だと言えましょう。

ユニークな魅力を湛えていつつ、聴き応えも十分な、素晴らしい演奏であります。