ミトロプーロス&ウィーン・フィルによるマーラーの交響曲第9番を聴いて

ミトロプーロス&ウィーン・フィルによるマーラーの交響曲第9番(1960年ライヴ)を聴いてみました。

ミトロプーロスらしい明晰な演奏となっています。そして、とても見通しが良い。ある意味、スッキリとしたマーラー演奏となっている。
それでいて、決して冷徹な演奏となっている訳ではありません。むしろ、かなり熱い演奏が繰り広げられている。いや、「音楽する熱狂がある」と言ったほうが良いかもしれません。それも、極度なまでの熱狂が。客観的に、或いは論理的に音楽を見つめながら、その一方で、音楽の魔神か何かに憑りつかれたかのような、没入的なひたむきさが表されているとも言いたくなる。
その結果として、端整でありつつも、エネルギッシュで、ドラマティックで、エモーショナルな音楽が鳴り響くこととなっています。更に言えば、音楽が至る所でうねっている。それはもう、音楽の奔流であると言えるほどに。もっと言えば、壮絶な演奏となっている。
そのうえで、ここでもウィーン・フィルが素敵な花を添えてくれています。艶やかで、しっとりとした響きは、実に魅惑的。とりわけ、最終楽章での弦楽器を中心とした美しさは、比類のないものだと言えましょう。激烈さを備えた艶美さ、とも言えるかもしれない。

神業的に見事な演奏。まさに、凄演であります。