モントゥー&パリ音楽院管によるストラヴィンスキーの≪春の祭典≫を聴いて

モントゥー&パリ音楽院管によるストラヴィンスキーの≪春の祭典≫(1956年録音)を聴いてみました。

モントゥーは、このバレエ音楽が1913年にパリのシャンゼリゼ劇場で初演された時の指揮者。その初演の様子は、次のようであったそうです。
観客ははじめの数小節で騒ぎ出し、バレエがいくらも進行しないうちに客席は喧騒の渦と化してしまった。

モントゥーは、1951年にボストン響とも同曲をセッション録音しており、そちらのほうが切れ味の鋭い演奏になっていると思います。そのボストン響盤に比べると、このパリ音楽院盤は、少々おっとりしているように思えます。
この曲に備わっているバーバリズムは薄いように思われます。そのうえで、独特の「薫り高さ」のようなものが感じられる演奏となっている。この点は、モントゥーの音楽性と、パリ音楽院管の特質とが融合された結果でもあるのだろうと言いたい。
その一方で、克明でもある。その顕著な例として、第1部の最後場面などでは、各声部がくっきりと浮かび上がってきています。また、バーバリズムとは異なりつつも、十分に力感に富んでいる。色彩豊かでもある。
そして、何よりも、確信に満ちた音楽づくりのようなものが感じられます。そこからは、風格が漂ってくるかのよう。

この作品のスキャンダラスな初演に直接的に関わっている「歴史の生き証人」であったモントゥーによる、ステレオ録音。しかも、初演されたパリに本拠地を置くオーケストラとの共演。
≪春の祭典≫の音盤史上、忘れることのできない、貴重な記録。そんなふうに言えるのではないでしょうか。