ザビーネ・マイヤー&ブロムシュテット&シュターツカペレ・ドレスデンによるウェーバーのクラリネット協奏曲第1,2番を聴いて
ザビーネ・マイヤー&ブロムシュテット&シュターツカペレ・ドレスデン(SKD)によるウェーバーのクラリネット協奏曲第1,2番(1985年録音)を聴いてみました。
カラヤンがマイヤーをベルリン・フィルに強硬に入団させようとしたことに対し、団員側が入団反対の決議をしたことによって、カラヤンとベルリン・フィルとの間に確執が生じることになった、世に言う「ザビーネ・マイヤー事件」が起きたのが1982年のこと。その出来事から3年後の録音ということになります。
さて、ここでの演奏はと言いますと、華やかで、かつ、適度に劇的なものとなっています。華やかで劇的だというのは、オペラを得意としていたウェーバーの作風に依るのでしょう。とは言いつつも、そのような作曲家の特徴をシッカリと描き切った演奏が繰り広げられているのは、やはり、演奏者たちの手腕に依るところが大きいと言うべきなのでありましょう。
マイヤーの音色や響きは、ドイツのクラリネット奏者としては、やや線が細くて、鋭角的だと思えます。とは言いながらも、それはあくまでもドイツの奏者としてはという範囲での話であって、充分にまろやかな音をしている。そして、とても艶やか。艶美と言っても良いかもしれません。そう、華のある美しさを持っている音色を楽しむことができる。
それに加えて、動きがとても機敏。コロラトゥーラ風に音をコロコロと転がす様は、聴いていて誠に快い。なんとも鮮やかな演奏ぶりが示されています。しかも、とても色彩的で、輝かしくもある。そう、ブリランテ(華やかで、輝かしい、の意)という形容がピッタリな演奏ぶりだと言いたい。そのうえで、2曲ともに、緩徐楽章では詩情豊かな音楽が奏で上げられてもいる。更に言えば、全体を通じて明瞭な音楽づくりが為されていて、見通しがとても良い。
そのようなマイヤーをサポートしているブロムシュテット&SKDがまた、誠実にして活気に満ちた演奏を繰り広げてくれていて、なんとも素晴らしい。しかも、キリっとしていて、格調高い。であるからこそ、プリマドンナ歌手がごときマイヤーも、彼らが準備してくれている極上のキャンバスの上で、自在な演奏を繰り広げることができている。そんなふうに言いたくなります。
聴き応え十分な演奏。更に言えば、演奏者たちの美質を存分に味わいながら、作品の魅力をタップリと楽しむことのできる演奏。
なんとも素敵な演奏であります。