ムター&マズア&ニューヨーク・フィルによるブラームスのヴァイオリン協奏曲を聴いて
ムター&マズア&ニューヨーク・フィルによるブラームスのヴァイオリン協奏曲(1997年ライヴ)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。
濃密でいながら、繊細にして緻密な演奏が繰り広げられています。
ムターによるヴァイオリンは、耽美的な弱音から、情熱的で雄弁な強音まで、表情の幅が非常に広い。そのような演奏ぶりを通して、ロマンティシズム溢れる音楽が展開されています。スキッとした佇まいを示しながら、ブラームスに相応しい「粘り気」や「うねり」がシッカリと表出されている。必要以上に激するようなことはないものの、生命力に満ちていて、必要十分に逞しく、エネルギッシュでもある。
しかも、諦観のようなものが感じられもする。声をすぼめながら音楽を奏で上げてゆくことも多い。共感性の高い、デリケートな音楽づくりが為されています。
そのようなムターを、マズアは堅実かつ周到にサポートしてくれています。ニューヨーク・フィルから、豊潤というよりもむしろ、室内楽的とも言えるような透明感のある響きを引き出しながら。そのような音楽づくりが、ここでのムターの演奏ぶりを引き立ててくれている。
このときムターは34歳。カラヤンが亡くなってから既に8年が経過してからの演奏ということになります。カラヤンの殻を破ったムターが奏でている、成熟度の高い演奏。そのように言えるのではないでしょうか。
聴き応え十分で、かつ、ジッと心に沁み込んでくる、素晴らしい演奏であります。