ル・サージュ&ドゥネーヴ&リエージュ・フィルによるプーランク集を聴いて
ル・サージュ&ドゥネーヴ&リエージュ・フィルによるプーランク集(2003年録音)を聴いてみました。
収められているのは下記の3曲。プーランクが、ピアノのために作曲した3つの協奏曲的な作品を全て収めた音盤ということになります。
●2台のピアノのための協奏曲
●ピアノ協奏曲
●ピアノと18の楽器のための舞踊協奏曲 ≪オーバード≫
2台のピアノための協奏曲には、ブラレイというピアノストも参加しています。2人のピアニスト、指揮者の全てが、フランスに生まれた演奏家。そこに、ベルギーのオーケストラが加わっての演奏になります。
なお、こちらは、図書館で借りてきたCDでの鑑賞。
ル・サージュによるピアノは、明晰でありつつも、柔らかみを持っている。音楽のフォルムが崩れるようなことは微塵もなく、誠に端正。篤実と言っても良いように思えます。そして、堅固な演奏ぶりが示されている。
それでいて、過度に硬質になるようなことはありません。しなやかで、暖かみがあって、音楽に膨らみがもたらされている。必要に応じて強靭なタッチが繰り出されるのですが、響きには常に潤いが感じられる。更には、機敏に動く箇所では、粒のクッキリとした音が紡ぎ上げられていき、風が吹き抜けてゆくような爽快さが感じられます。抒情的な性格の濃い箇所では、夢見心地に誘われるような柔らかみのある音楽が耳を捉える。
そのうえで、プーランクならではの軽妙洒脱な演奏が繰り広げられてゆく。そして、洗練された音楽世界が広がっている。しかも、硬軟のコントラストが鮮やか。音楽が諧謔的な性格を示す箇所では、ニヒルな表情を湛えたものとなっている。悪戯っぽさも存分に感じられもする。そんなこんなを含めて、プーランク独自のチャーミングな音楽世界が、なんの誇張もなく、広がってゆく演奏となっています。光彩陸離たる演奏ぶりだとも言いたい。
そのようなル・サージュを支えるドゥネーヴによる指揮もまた、硬軟のバランスが絶妙だと言えましょう。
力感溢れる逞しさが示されていつつも、しなやかさや柔らかさが備わっている。充分に刺激的でありつつも、決して攻撃的ではない。急速な箇所ではエッジの効いた音楽を奏で上げつつも、決してふくよかさを失うようなことはない。
全編を通じて、熱狂的で、スリリングでいて、エレガントな雰囲気も備えている音楽づくりが示されている。そんなふうに言えるように思えます。
この3曲に宿っているプーランクの魅力を存分に楽しむことのできる、素敵な素敵な演奏であります。