ガーディナー&リヨン国立歌劇場管によるビゼーの交響曲を聴いて

ガーディナー&リヨン国立歌劇場管によるビゼーの交響曲(1986年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

ガーディナーによるフランス音楽というのは、珍しいと言えましょう。オルケストル・レヴォリューショネル・エ・ロマンティークを指揮して録音したベルリオーズの諸作が、比較的よく知られていると言ったところでしょうか。あと、ウィーン・フィルとのシャブリエ集も、目を引く存在だと思われます。
当盤は、1983-89年に音楽監督を務めていたリヨン国立歌劇場のオーケストラとの録音を収めたもので、他に、マスネやベルリオーズなどの作品も併録されています。

さて、ここでのビゼーの交響曲の演奏について。
この作品の演奏にしては、堅固な演奏ぶりが示されていると言えそう。その分、キリっとしていて、古典的な佇まいが強調されているように思えます。とりわけ、第2楽章での演奏ぶりに、そのような傾向が強く現れている。
テンポはやや遅め。そのことがまた、堅固な演奏だとの印象を強めています。
もっと溌溂としていて欲しい、明快であって欲しい、といった思いを抱きながら聴いていました。第2楽章までは。
しかしながら、第3楽章に入ると、速めのテンポが採られ(と言いますか、一般的な速度となっている)、溌溂としてくる。弾力性を帯びていて、軽妙さが加えられている。とは言え、底抜けに明るい演奏となっている訳ではありません。自制心のようなものが働いている。手綱がシッカリと引かれている演奏ぶりだとも言えそう。その辺りに、ガーディナーの、演奏家としての誠実さが窺える。
最終楽章は、第2楽章までの堅固なスタイルと、第3楽章での溌溂とした演奏ぶりとが融合されたものとなっているように思えます。キリっとしていながらも、弾力性を帯びた音楽が鳴り響いている。

ガーディナーの音楽性がクッキリと刻印されているビゼーの交響曲。しかも、聞こえてくる音楽からは、シッカリとした手応えを感じ取ることができる。
数多くあるある当作品の演奏の中ではユニークな表情をした演奏だと言えそうですが、聴き応え十分で、誠に興味深い演奏だと思います。