ロジェストヴェンスキー&ボリショイ劇場管によるシチェドリンの≪カルメン≫組曲を聴いて

ロジェストヴェンスキー&ボリショイ劇場管によるシチェドリンの≪カルメン≫組曲(1967年録音)を聴いてみました。
旧ソ連生まれのシチェドリン(1932-)が、ビゼーによる≪カルメン≫の旋律を素材にして(その中に、≪アルルの女≫のファランドールや≪美しきペルトの娘≫のジプシーの踊りなどが出てきたりもしますが)、自由にアレンジを施しながら編まれたバレエ組曲になります。
演奏時間は40分強。

その音楽は、とてもエキゾチックなもの。もともと、ビゼーのオペラ≪カルメン≫自体がエキゾチックな雰囲気に満ちていると言えるのですが、それを更に煽情的にしているような仕上がりになっている。
更には、打楽器の大胆な使用が特徴的だとも言えましょう。マリンバやシロフォンやヴィブラフォンといった鍵盤系の打楽器や鐘のみならず、時には木魚や釣りシンバルなどが旋律線を奏でることもある。或いは、旋律の要所要所で、打楽器がくさびを打ち込んでゆき、音楽にアクセントを与えてゆく。そのことによって、先鋭的で、斬新なフォルムをした音楽となっている。
そのうえで、原色的な色彩が与えられている。そして、響きが多彩でもある。音楽から艶めかしさが感じられます。
大書したいのは、編成に管楽器が加えられていないということ。弦楽器群と打楽器のみで、このような色合いを出すことができているのは驚異的なことだと言いたい。
と言いつつ、旋律線はあくまでもビゼーによるものから大きく逸脱していません。そのために、難解な音楽には一切なっていない。むしろ、音楽の「ビックリ箱」を次々と開けてゆくような愉しさに溢れている。

そのような作品を、録音当時36歳だったロジェストヴェンスキーが、生命力豊かに奏で上げてゆく。とてもエネルギッシュで、ドラマティックな演奏ぶりなのであります。或いは、時にセンチメンタルに歌い上げてもゆく。そんなこんなが芝居っ気たっぷりなのですが、この作品の場合は、そういった音楽づくりが板に付いたものだと感じられる。
まさに、作品の魅力をシッカリと描き出している演奏だと言えましょう。

シチェドリンの≪カルメン≫組曲、とても面白く、かつ、なんとも素敵な音楽であります。そして、ここでの演奏は、その魅力を存分に味わうことのできるものとなっている。
ある種、ゲテモノ的な存在だと言えそうなものの、多くの音楽愛好家に聴いてもらいたい作品であり、演奏であります。