ベルグルンド&ヨーロッパ室内管によるシベリウスの交響曲第1番を聴いて

ベルグルンド&ヨーロッパ室内管によるシベリウスの交響曲第1番(1997年録音)を聴いてみました。
NML
(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

ベルグルンド(1929-2012)は、生涯に3つのシベリウスの交響曲全集を完成させていますが、これはその最後のもの。それぞれに素晴らしい演奏が刻まれていると言えましょうが、私が最も愛しているのが、この最後のヨーロッパ室内管とのものであります。
編成の小さな室内オーケストラを使っていつつ、雄大で気宇の大きな演奏となっています。響きは決して薄くない。
それでいて、室内オーケストラの利点であると言える響きの透明さを獲得しています。音楽が全くベトついていない。そして、各パートの動きが克明である。
そのような外観を持った演奏ぶりを通じて、大言壮語しない端然とした演奏を繰り広げてゆくベルグルンド。抒情性に溢れていて、そこには、「冴え冴えとした熱狂」と呼びたくなるような熱さが感じられもします。そう、決してあからさまではない、内に秘めた熱狂のようなものが、ここには宿っているように思うのです。
そのような演奏ぶりが、シベリウスの音楽には誠に似つかわしいと言えましょう。もっと言えば、とてもチャーミングなシベリウスになっている。しかも、適度に凝縮度が高く、決して散漫な音楽になっていないところが、なんとも素晴らしい。

さて、ここでの第1番の演奏はと言いますと、前述した特徴がよく現れていると思います。すなわち、逞しさと、清々しさとを兼ね備えている演奏だと言いたい。
何よりも喜ばしいのは、そのような演奏ぶりが、この第1番では作品の性格に殊更に合致していて、とても好ましく思えるところ。この作品に相応しい若々しさや、伸びやかさや、パッショネートな性格や、といったものが存分に表されています。溌溂としていて、晴朗な音楽世界が広がってもいる。
そのうえで、端正な演奏が繰り広げられている。更に言えば、シッカリとした生命力の感じられる音楽が鳴り響いている。そして、抒情性が豊かでもある。

頗るチャーミングな、そして、充実感タップリな演奏。
ベルグルンドの美質と、作品の魅力にタップリと触れることのできる、素敵な素敵な演奏であります。