グリュミオー&ケンペ&バイエルン放送響によるモーツァルトの≪トルコ風≫を聴いて

グリュミオー&ケンペ&バイエルン放送響によるモーツァルトの≪トルコ風≫(1960年ライヴ)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

速めのテンポによる爽快感に満ちた演奏となっています。
しかも、ここでも、グリュミオーの甘美にして艶やかな音色の魅力に溢れた演奏ぶりを心行くまで楽しむことができる。そう、頗る美麗なヴァイオリン演奏となっているのであります。そのうえで、伸びやかで、しなやか。モーツァルトならではの屈託の無さも、十分に描き出されている。音楽が存分に弾んでもいる。
そのような中で、緩徐楽章となる第2楽章では、歌心に満ちていて、かつ、抒情性に溢れた音楽が奏で上げられています。それはまさに、心に深く染み渡ってくる音楽となっている。
総じて、甘美でありながらも、主情に流されるようなことのない音楽が鳴り響いています。音楽のフォルムが崩れるようなことも皆無。そのうえで、適度なふくよかさや暖かさを備えた音楽が奏で上げられている。
そのようなグリュミオーに対して、ケンペは誠実味に溢れた音楽づくりで応えてくれています。実に清々しくて、かつ、快活な演奏ぶりでもある。しかも、重苦しくなるようなことは一切ないものの、じっくりと腰の据わった音楽を奏で上げてくれている。コクが深くもある。そのようなケンペの演奏ぶりがまた、この演奏をより一層端正なものにしてくれていると言いたい。

グリュミオーとケンペの魅力が遺憾なく発揮されている、なんとも素敵な演奏であります。