パーヴォ・ヤルヴィ&チューリヒ・トーンハレ管によるチャイコフスキーの交響曲第3番≪ポーランド≫を聴いて

パーヴォ・ヤルヴィ&チューリヒ・トーンハレ管によるチャイコフスキーの交響曲第3番≪ポーランド≫(2021年録音)を聴いてみました。

NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音源での鑑賞になります。

5つの楽章から成るこの交響曲。≪ポーランド≫という副題は、最終楽章でポロネーズのリズムが採られていることに依ります。

さて、ここでの演奏はと言いますと、明晰にして、鮮烈なものとなっています。そして、楽章ごとの性格付けが、誠に克明でもある。

第1楽章では、疾走感に溢れた演奏が繰り広げられている。推進力が頗る強くもある。そのために、エネルギッシュにしてドラマティックで、実にスリリングであります。音の粒がクッキリと立っていて、音楽の輪郭が克明でもあります。そして、音楽が颯爽と推し進められてゆく。
その一方で、第2楽章でのメランコリックな雰囲気にも不足はありません。旋律線をキッチリと描き上げつつも、滑らかさやしなやかさが備わっている。緩徐楽章である第3楽章では、音楽を高らかに謳い上げていて、切実さの滲む音楽が鳴り響いている。

メンデルスゾーンの≪真夏の夜の夢≫に通じるような「妖精の音楽」と評したくなるスケルツォ楽章となる第4楽章では、適度な浮遊感を表出しながらも、輪郭線の明瞭な音楽が奏で上げられていて、かつ、逞しさが備わってもいて、めくるめく音楽が展開されている。
そして、最終楽章では、オーケストラを鮮やかにドライブしながら、勇壮な演奏が繰り広げられてゆく。音楽が、そこここで弾け飛んでいます。そのうえで、壮麗なクライマックスが築き上げられている。

パーヴォの美質が滲み出ている演奏。そのうえで、この交響曲の魅力をタップリと味わうことのできる演奏となっている。
いやはや、なんとも素晴らしい演奏であります。