ストコフスキー&ロンドン響によるドビュッシーの≪夜想曲≫を聴いて
ストコフスキー&ロンドン響によるドビュッシーの≪夜想曲≫(1957年録音)を聴いてみました。
ストコフスキーは「音の魔術師」と呼ばれ、オーケストレーションに手を加えたり、独自のアレンジを施したり、個性的なバランスでオケを掻き鳴らしたり、聞かせどころを強調したりと、独特な感覚に彩られた演奏を繰り広げることが多く、「怪人」とも形容されるような存在でありました。
そこへいきますと、この≪夜想曲≫は、かなり「マトモ」だと言えそうです。特別に破天荒な趣向が凝らされている訳ではありません。
(第2曲の「祭り」においては、ところどころでタメを作っていたり、第1ヴァイオリンによる旋律をオクターヴ上げて輝かしい色合いを持たせたり、木管楽器の動きを目立たせたり、といった独自の演出が為されていますが、それでも度を越していると言うほどではない。)
と言いつつも、かなり色彩的な演奏となっているのはやはり、ストコフスキーならではの音響感覚に依っているが故だと言えましょう。そのうえで、生き生きとした躍動感が備わっている。そんなこんなによって、華麗にして煌びやかな音楽世界が広がることとなっています。なおかつ、そういった演奏ぶりが、ドビュッシーの作品の魅力を引き立ててくれている。
作品の音楽世界にどっぷりと身を浸しながら、ストコフスキーの妙技を楽しむことのできる、素敵な演奏であると思います。