ワルター&コロンビア響によるシューベルトの≪ロザムンデ≫組曲を聴いて
ワルター&コロンビア響によるシューベルトの≪ロザムンデ≫組曲(1955年録音)を聴いてみました。演奏されているのは、序曲、バレエ音楽第2番、間奏曲第2番の3曲。なお、ここでのコロンビア響は、ワルターが一連のステレオ録音を遺したカリフォルニアのオーケストラとは別の、録音用に編成されたアメリカ東海岸の楽団であります。
モノラル期におけるワルターの多くの録音に共通して認められる、覇気の籠った演奏となっています。気宇が大きくもある。それでいて、例えばニューヨーク・フィルとのブラームスやモーツァルトやベートーヴェンやで感じられた、燦然たる輝きを放ちながらの熱気漲る演奏に比べると、かなり穏やかなものとなっている。
そのうえで、これはもう、どの時期のワルターの演奏にも共通して言えるのですが、なんとも言えない暖かみがある。音楽の奥に微笑みが感じられる。慈しみが感じられもする。そして、とても優美な演奏となっている。そのような音楽づくりによって、≪ロザムンデ≫が持っている可憐にして典雅な音楽世界が、魅力的に描き出されてゆく。
ワルターの奥行きの深さを痛感することのできる、なんとも素敵な演奏であります。