ゲルギエフ&マリンスキー劇場管によるストラヴィンスキーの≪ペトルーシュカ≫を聴いて

ゲルギエフ&マリンスキー劇場管によるストラヴィンスキーの≪ペトルーシュカ≫(2014年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音源での鑑賞になります。

ゲルギエフならでの鮮烈な演奏であります。
ゲルギエフは、1990年頃にフィリップスを中心として活発なレコーディング活動を開始し、その頃は、野性的とも言える荒々しくて豪放な演奏を聞かせてくれていました。それはもう、エネルギッシュでダイナミックで、迫力満点な演奏を繰り広げることが多かった。しかしながら、2000年くらいを境にして、野性的というよりも洗練味を効かせた演奏へと傾斜していき、2007年にロンドン響の首席指揮者に就任すると、その傾向をいよいよ強めていったように思えます。アグレッシブな演奏ぶりが後退し、折り目正しさや精密さを前面に押し出すようになった、とも言えそう。
ところが、2014年に演奏されたこの≪ペトルーシュカ≫では、原点回帰したかのように、アグレッシブな演奏が繰り広げられています。押し出しが誠に強くもある。そう、音楽における「圧力」と呼べそうなものが、非常に大きい。そして、豪壮にして、ドラマティックな音楽が鳴り響いている。それはもう、聴いていて痛快この上ない。
そのうえで、近年のゲルギエフに特徴的な洗練味が感じられもする。思いっ切りパワフルに音楽を掻き鳴らしているのだが、野放図な演奏ぶりにはなっておらず、折り目の正しさや精密さが備わってもいる。

いやはや、なんとも見事な、そして、聴き応えの十分な、素晴らしい演奏であります。