小澤さん&シカゴ響によるルトスワフスキの≪管弦楽のための協奏曲≫を聴いて

小澤さん&シカゴ響によるルトスワフスキの≪管弦楽のための協奏曲≫(1970年録音)を聴いてみました。

若き日の小澤さんによる演奏の特徴だと言える、鮮烈でアグレッシブな音楽づくりがクッキリと現れている演奏が繰り広げられています。
切れ味の鋭い演奏ぶりで、明晰な演奏となっている。粒立ちが、とても鮮やかで、クリアでもある。そう、全体的に、実に明快な演奏が展開されているのであります。色彩感に溢れてもいる。
才気煥発、という言葉がピッタリだと言えましょう。敏捷性があって、かつ、柔軟性が感じられもする。音楽が弾け飛んでいる。運動能力も、とても高い。
かなりヤンチャな演奏だとも言えそう。そして、音楽表現が誠にストレートであります。
この作品には、「おどろおどろしさ」のようなものもあると思えるのですが、そのような要素を必要最小限に表現しながら、鮮烈な音楽に仕上げてくれています。そのうえで、とても凄絶な演奏が繰り広げられている。
それでいて、羽目を外している演奏にはなっていません。そう、節度のある演奏となっている。熱気に溢れており、生命力豊かな演奏ぶりでありつつ、とても端正な演奏となっている。この辺りは、小澤さんの誠実さに依るのでありましょう。
そのような小澤さんの演奏ぶりに対して、シカゴ響は鋭敏に反応していて、こちらも実に鮮やか。合奏力の高さや、機能性の高さも、見事としか言うことがありません。とりわけ、第2楽章は技巧的にかなり難度が高いように思えるのですが、精度の高い音楽が展開されてゆく。最終楽章となる第3楽章は、誠にパワフルであり、かつ、混濁の無いクリアな音楽が鳴り響いている。そのようなシカゴ響がまた、小澤さんの明晰な音楽づくりを引き立たせてくれている。

なんとも潔くて、痛快な気分にさせられる演奏。しかも、精度が高く、純度もとても高い演奏だと言いたい。
これはもう、1970年前後の小澤さんによる演奏の魅力を堪能することのできる、素晴らしい演奏であります。
(ちなみに私は、この頃の小澤さんが、大大大好きなのであります。)