セル&クリーヴランド管によるドヴォルザークの≪新世界より≫を聴いて

セル&クリーヴランド管によるドヴォルザークの≪新世界より≫(1959年録音)を聴いてみました。

なんと豊かな音楽が鳴り響いていることでしょう。
精緻でありながら、感興豊か。熱気に溢れ、力感たっぷりで、躍動感に満ち、鮮烈でもある。あからさまではないながらも、内に秘めた輝かしさが感じられる。
フルニエとのドヴォルザークのチェロ協奏曲(ベルリン・フィルとの共演)でも、熱く燃え滾る演奏を展開してくれているセル。ドヴォルザークの作品を前にすると、血が騒ぐのでしょう。
その一方で、凛としてもいる。キリっとしていて、高潔で、気高さを湛えた演奏となっている。なんとも美しい佇まいをしています。頗る純度の高い演奏となってもいる。
そして、時に万感の籠った連綿とした歌を聞かせてくれもする。その代表例として、最終楽章での再現部の第2主題を挙げたい。

セルの素晴らしさがギッシリと詰まっている、見事な演奏であります。