ショルティ&シカゴ響によるムソルグスキーの≪展覧会の絵≫を聴いて

ショルティ&シカゴ響によるムソルグスキーの≪展覧会の絵≫(1980年録音)を聴いてみました。

ショルティらしい、メリハリの効いた音楽づくりによる、明快な演奏であります。
と言いつつも、ショルティにありがちな強引さは感じられない。過度にドラマティックな演出を施したり、刺激的であり過ぎたり、作品に対してシャープに切り込んでいったり、凹凸のハッキリとした演奏ぶりを示したり、ということもない。むしろ、滑らかな音楽づくりが為されています。ゆとりを持った演奏が展開されているとも言えそう。但し、「ババヤーガの小屋」に関してのみ、かなりドラマティックな演奏となっていますが。
そのうえで、精緻で克明な演奏となっている。過度にドラマティックではないものの、充分なる力感が感じられる。ちょっぴり丸くなってはいますが、ショルティはやはりショルティ。明晰な演奏ぶりが示されています。
ところで、ショルティは1980年の前半あたりを境にして、演奏内容に丸みや柔らかみを帯びるようになってきたと感じています。そこへいきますと、この≪展覧会の絵≫は、その転換期に差し掛かった時期に録音されたもの。
丸みや柔らかみや優しさやが加えられたショルティの演奏ぶりの精華と言えるものが、マーラーの交響曲第4番(1983年録音)であり、リストの≪ファウスト交響曲≫(1986年録音)であると考えているのですが、この≪展覧会の絵≫も、後年のショルティの音楽づくりの片鱗が伺える演奏となっているように思える。

ショルティの演奏の変遷を辿る上で、興味深い演奏であると言えましょう。