アンセルメ&スイス・ロマンド管によるドビュッシーの≪夜想曲≫≪海≫≪牧神の午後への前奏曲≫を聴いて

アンセルメ&スイス・ロマンド管によるドビュッシーの≪夜想曲≫≪海≫≪牧神の午後への前奏曲≫(1957,64年録音)を聴いてみました。

アンセルメの代表盤の一つと看做されることが多く、かつ、一時代前は、この3曲の演奏として真っ先に挙げられることも多かった、世評の高い音盤であります。
さて、その印象でありますが、アンセルメらしい、精巧で明晰な演奏だと言えましょう。
磨き上げが、頗る丹念。そのうえで、輪郭線が明瞭で、筆致の克明な演奏となっています。目鼻立ちがクッキリとしていて、立体的でもある。
決して極彩色ではなく、どちらかと言えば寒色系だと言えそうですが、彩りの鮮やかな演奏が繰り広げられています。そして、冴え冴えとした演奏になっている。と言いつつも、体温が低い訳ではありません。力感に不足はなく、適度な情熱が織り込まれていて、生き生きとしている。更に言えば、音楽が豊かに息づいている。
そのような音楽づくりを通じて、活力に満ちていつつ、玲瓏としていて、透徹した美しさが滲み出してくる演奏となっている。

最近では、アンセルメによる演奏は、あまり顧みられなくなってきているように思えますが(その一方で、私の知合いの中には、熱狂的なファンもいらっしゃいます)、多くの音楽愛好家に聴き継がれていって欲しい、素晴らしい演奏であると思います。