藤岡幸夫さん&関西フィルによる演奏会を聴いて

今日は、藤岡幸夫さん&関西フィルの演奏会を聴いてきました。演目は、下記の通り。
●松村禎三 ピアノ協奏曲第1番(独奏:渡邉康雄さん)
●ラフマニノフ 交響曲第3番

昨日の尾高さん&大阪フィルの演奏会に続いて、実演で接する機会の少ない2つの作品に触れる貴重な体験を与えてくれることとなった演奏会。特に、松村さんのピアノ協奏曲を採り上げる演奏会を探すのは、なかなか難しいのではないでしょうか。
そのような演奏会の出演者であるピアニストの渡邉さんは、指揮者の渡邉暁雄さんの息子、そして、指揮者の藤岡さんは渡邉暁雄さんの弟子になるとのこと。そんな、渡邉暁雄さんに所縁のあるこの2人がコンビを組んでの演奏会は、これまでにも何度か開かれているよう。まさに、気心の知れた2人による共演であると言えるのではないでしょうか。
尚、両曲とも実演で聴くのは初めて。また、藤岡さんも、渡邉さんも、聴くのは初めてでありました。どのような音楽に巡り会うことができるのかと、心を弾ませて会場へと足を運んだものでした。

それでは、演奏を聴いて感じられたことについて、書いてゆくことにします。まずは、松村さんのピアノ協奏曲第1番から。
この作品でのピアノ独奏は、高いヴィルトゥオジティが要求されているようなものではなく、動きが抑制された中で、抒情的で神秘的な音が終始奏で上げられるような音楽であると言えましょう。そこに、オケが濃厚な音楽を添えてゆく。時に咆哮しながら。時に、ピアノに優しく寄り添いながら。
プログラム冊子の解説には「呪術的」という言葉が使われていますが、まさにそのような音楽。また、作曲者自身が初演時に書いた文章の中には「大地からたちのぼる自然なうたでありたいと思いつづけて、この曲を書きました」という言葉もありますが、この作品に込められた思いを知ることのできる貴重な一文であると思えます。
今日の演奏者たちは、そのようなこの作品の性格をシッカリと描き上げてくれたものとなっていました。起伏を大きく取りながらも繊細な音楽が鳴り響いていた。優しさの籠った演奏であったとも言えそう。そして、とても緊張感の高い演奏となっていた。
そんなこんなによって、誠に神秘的な世界の現出する音楽となっていた。松村さんが込めた思いを実直に描き上げていった演奏だったと思えます。

続きましては、メインのラフマニノフの交響曲第3番について。
熱演でありました。激情的であり、音楽が存分にうねっていた。ドラマティックで、スリリングで、ロマンティック。メリハリが効いていて、表現の振幅がとても大きい。そして、とても艶やかであった。歌心に溢れてもいた。
そのような演奏ぶりが、この作品には誠に相応しい。
藤岡さんの豊かな感受性と、率直な表現意欲とが好ましい形で実を結んでいた演奏。そんなふうに言えるように思えます。