ルービンシュタイン&バルビローリ&ロンドン響によるショパンのピアノ協奏曲第1番を聴いて

ルービンシュタイン&バルビローリ&ロンドン響によるショパンのピアノ協奏曲第1番(1937年録音)を聴いてみました。

ここでのルービンシュタインは、美麗にして、情趣深い演奏を繰り広げてくれています。演奏の端々から、詩的な雰囲気や哀感が滲み出ている。
と言いつつも、決してひ弱な演奏ぶりではありません。毅然としていて、かつ、壮麗な音楽が鳴り響いている。録音当時、ルービンシュタインはちょうど50歳。壮年期における演奏と言え、頑健にして果敢で、覇気の漲っている演奏が繰り広げられています。凛々しくて、風格豊かでもある。
しかも、瑞々しくて、しなやか。剛健でありつつも、柔らかみが備わってもいる。そのうえで、ショパンならではの私的情緒の豊かさを感じさせてくれる演奏となっている。
そのようなルービンシュタインに対して、バルビローリのサポートがまた、なんとも雄渾なものとなっています。気宇が大きくて、逞しい。その音楽づくりは、ここでのルービンシュタインの演奏ぶりに似つかわしいと言えましょう。

今から86年も前の録音ながら、音の輪郭がハッキリとしていて、鑑賞には全く支障のない音質をしているのが、有難いところ。
この時代にありがちな、オーケストラのみが奏でる箇所の大きなカット(例えば、第1楽章のオケによる主題提示の箇所など)が施されていたりしますが、ルービンシュタイン&バルビローリという組合せの妙と、この作品の魅力を堪能する歓びとが詰まっている、素敵な演奏であります。