ハイティンク&コンセルトヘボウ管によるR・シュトラウスの≪アルプス交響曲≫を聴いて

ハイティンク&コンセルトヘボウ管によるR・シュトラウスの≪アルプス交響曲≫(1985年録音)を聴いてみました。

当盤は、ケンペ&シュターツカペレ・ドレスデン盤とともに、私にとっての同曲のベスト盤の一つ。

それにしましても、なんと堅実でケレン味のない演奏なのでありましょう。キッチリカッチリと仕上げられている≪アルプス交響曲≫。
この作品、時に映画に喩えられることがありますが、誠に写実的な音楽となっています。音楽のパノラマが広がっていくような音楽。壮麗で、華麗な音楽。であるだけに、派手にケバケバしく演奏することの似合う作品だとも言えましょう。
そこへいきますと、このハイティンク盤には、ケバケバしさが全くない。あるのは、格調が高くて、純美な音楽。折り目正しくて、端正な演奏となっています。しかも、構築感の高さが感じられる。そのうえで、十分に力感に満ちていて、この作品に相応しいパノラマ的なスケールの大きさがシッカリと備わったものとなっている。押し出しが強くて、腰の据わった音楽が響き渡っている、とも言いたい。
そこに、コンセルトヘボウ管の充実感いっぱいで、ふくよかで芳醇な響きが加わることによって、この演奏が、より一層魅力的なものとなっている。

この曲は、そもそも、大掛かりな仕掛けが随所に施されている音楽でありますので、そういった仕掛けを誇張しなくとも、或いは、派手な演出を施さなくとも、作品の「面白さ」は充分に伝わってくると思っています。ハイティンク&コンセルトヘボウ管による演奏は、このことを理想的な形で実証してくれている。そのように思えてなりません。
純粋な音楽美を湛えている≪アルプス交響曲≫。いやはや、なんとも見事で聴き応え十分な、頗る魅力的な演奏であります。