ミトロプーロス&ケルン放送響によるメンデルスゾーンの≪スコットランド≫を聴いて
ミトロプーロス&ケルン放送響によるメンデルスゾーンの≪スコットランド≫(1957年ライヴ)を聴いてみました。
ミトロプーロスならではの、シャープな音楽づくりを基調としながら、逞しい生命力を宿している演奏となっています。
明晰にして、緻密な演奏が繰り広げられています。音の粒立ちがクッキリとしていて、音楽運びがスッキリとしてもいる。そのうえで、強大なエネルギーを蔵した逞しい音楽の奔流が、堰を切ったように押し寄せてくるような演奏となっている。
そのような性格は、とりわけ、第2楽章において顕著。音楽が渦を巻いて突進してゆくかのようであります。そして、敏捷性の高い音楽が鳴り響いている。
最終楽章でも、強靭かつ推進力に満ちた演奏が繰り広げられている。剛毅で、輝かしくて、気宇が大きくもある。コードの部分は、
その一方で、歌心やロマンティシズムにも不足はありません。第3楽章などでは、優美ささえ漂っている。
そんなこんなによって、「燃え盛るロマンティシズム」と呼びたくなるような音楽世界を感得することができる。
全体的に鋭利な演奏ぶりでありつつも、音楽を締め上げるような素振りが見えない。こけおどしな表現も、一切感じられない。全てが作品の内面に直結しているような演奏。そんなふうに言えるのではないでしょうか。
それ故に、充実感たっぷりで、凛としていて、気高さのようなものすら感じられてくる演奏となっている。強靭でありつつ、ふくよかさが感じられもする。そのような演奏ぶりが、メンデルスゾーンの交響曲の中で最も規模が大きく、広壮な音楽世界を内包しているこの作品に、誠に似つかわしいと思えます。
ミトロプーロスの演奏の魅力と、作品の魅力とを存分に味わうことのできる、素晴らしい演奏であります。