ビーチャム&フランス国立放送管によるフランクの交響曲を聴いて

ビーチャム&フランス国立放送管によるフランクの交響曲(1959年録音)を聴いてみました。
ビーチャム卿(1879-1961)が80歳を迎えた年の録音になります。

温和な好々爺、というイメージが強いかもしれないビーチャム卿でありますが、ここでの演奏は、なかなかにアグレッシブなもの。押し出しが強くて、表情の起伏は大きく、ドラマティックで、威風堂々としています。頗る生命力の豊かな演奏となっている。
しかも、音楽全体が実に生き生きとしていて、筆致は克明。鮮やかで、かつ、輝かしい音楽が鳴り響いています。音楽が存分にうねってもいる。
そのうえで、人情味に溢れた温かさを感じさせてくれる演奏が繰り広げられています。過度に煌びやかになるようなことはなく、鮮烈に過ぎるようなことにもならず、滋味深さが感じられる演奏となっている。
適度にエレガントであり、演奏から芳しさが感じられもします。この辺りについては、とりわけ、第2楽章において顕著に窺える。
息遣いが豊かでもある。なおかつ、たゆたうような様がまた、なんとも美しい。この辺りは、全楽章を通じて窺えます。
そんなこんなによって、ビーチャムの赤裸々な感情が滲み出ているような演奏でありつつ、懐の深い演奏だと言いたくなります。

ビーチャムの音楽性の豊かさを(更に言えば、人間性の豊かさを)シッカリと感じ取ることができ、かつ、作品の醍醐味を満喫することのできる、素晴らしい演奏であります。