ミルシテイン&スタインバーグ&ピッツバーグ響によるグラズノフのヴァイオリン協奏曲を聴いて
ミルシテイン&スタインバーグ&ピッツバーグ響によるグラズノフのヴァイオリン協奏曲(1957年録音)を聴いてみました。
なんとも凛々しい佇まいをしている演奏であります。
ミルシテインは、ここでも気品のある美音を、惜しげもなく提供してくれている。鳴り響いている音は、実に艶やかであり、潤いがある。そして、とても美しい。
それでいて、ケバケバしいものにはなっていません。媚を売るようなところも、微塵も感じられない。毅然としていて、キリッとした演奏が繰り広げられている。
そのうえで、グラズノフの作品が持っている、華麗で妖艶な雰囲気にも全く不足はありません。たっぷりと歌い込んでくれてもいて、伸びやかで、ロマンティックな音楽が展開されている。
名技性も充分。しかも、テクニックが冴え渡っているのですが、これ見よがしに誇示するようなものにはなっていない。そこに、演奏家としての「誠実さ」のようなものが感じられる。
いやはや、聴いていてウットリとしてくる、魅惑的な演奏であります。
学生オケに所属していたとき、何人かのヴァイオリン弾きが、「ミルシテインのヴァイオリンは別格。それはもう、神がかり的に素晴らしい」といった趣旨のことを述べていました。当時は、そのような言葉に今一つピンときていなかったのですが、今になってこのような演奏を聴くと、「まさにその通りだ!!」と思わずにはおれません。