スウィトナー&シュターツカペレ・ベルリンによるブルックナーの交響曲第5番を聴いて
スウィトナー&シュターツカペレ・ベルリンによるブルックナーの交響曲第5番(1990年録音)を聴いてみました。
どっしりと構えた演奏ぶりでありつつも、重苦しくない。速めのテンポが採られていて、どちらかと言えば、爽やかさの感じられるブルックナー演奏となっています。重すぎず、軽すぎもせず、清澄な空気の漂っているブルックナー。
しかも、堅実な音楽づくりが為されていて、奇を衒ったところが微塵も感じられません。ただただひたすらに、楽譜に記された音を丹念に再現しようという意志が感じられる。そして、構成感の高さを備えている。この作品の随所で見られる階段状に構成されてゆく音楽世界(それは特に、最終楽章において顕著)も、明朗な形で描き出されています。その後に訪れる、結びへと向かってゆく昂揚も、爽快な壮麗さを伴った音楽として奏で上げられている。
響きは、ややくすんでいるようでいて、明るくもあります。分厚過ぎるようなことにならない範囲で、充実感がいっぱいでもある。
そんなこんなであるうえで、爽やかさも感じられるブルックナー演奏となっているのであります。清潔感の漂っている演奏だとも言えそう。
誠実な演奏ぶりも含めて、スウィトナーの人間性や音楽性が滲み出ているブルックナー演奏。あまり深刻ぶらずに聴くことができ、かつ、聴き応えが十分でもある。
ユニークな魅力を湛えている、素敵な演奏であります。