ムラヴィンスキー&レニングラード・フィルによるブラームスの交響曲第4番を聴いて

ムラヴィンスキー&レニングラード・フィルによるブラームスの交響曲第4番(1973年4月ライヴ)を聴いてみました。

ムラヴィンスキー&レニングラード・フィルのコンビは、1973年の5月に初来日していますが、ここで聴くことのできる演奏は、その直前の4月28日に、本拠地のレニングラードで催された演奏会をライヴ録音したものになります。
飛行機嫌いのムラヴィンスキーは、シベリア鉄道を利用しての来日。4/28,29の2日間にわたるレニングラードでの演奏会を終えた10日後の5/9にレニングラードを出発し、150時間にもわたるシベリア鉄道での旅と、船とを乗り継いで、5/18に横浜に到着したとのことであります。

さて、ここでの演奏について。
ムラヴィンスキーと言えば、鋼の意志に支えられた強靭な音楽づくりをベースとしながら、緊張度や凝縮度が高く、厳格な演奏を行うことが多い、という印象が強いように思えます。ある種、作品を「追い込む」ような演奏ぶりが特徴的であるとも言えそう。演奏から、眼光の鋭さのようなものが感じられもする。
しかしながら、ここでの演奏は、そのような傾向は薄いように思えます。
なるほど、決してヤワな演奏ではありません。それでいて、眼光が鋭いというよりも、優しい良いまなざしのようなものが感じられる演奏となっているのであります。そして、頗るロマンティックである。第1楽章の中盤までは、哀愁を帯びた音楽が鳴り響いている。そのうえで、第1楽章の終盤や、最終楽章などでは、ムラヴィンスキーらしい切迫感がシッカリと表された音楽が展開されてゆく。燃焼度が高くもある。
そんなこんなの表現が、いかにもブラームスに相応しい。とりわけ、この4番が持っている性格には。

ムラヴィンスキーという指揮者の奥深さを感じることのできる演奏。そんなふうに言えるように思えます。