バーンスタイン&フランス国立管によるベルリオーズの≪イタリアのハロルド≫を聴いて

バーンスタイン&フランス国立管弦楽団によるベルリオーズの≪イタリアのハロルド≫(1976年録音)を聴いてみました。


1970年代中頃までのバーンスタインにしては、煽情的であったり、熱狂で押しまくったり、といった演奏ぶりにはなっていません。むしろ、整然としていて、沈着な演奏ぶりだと言えそう。第3楽章までの演奏は。
その分、ニュアンスの細やかな演奏となっています。最終楽章に至るまで、エネルギーを貯め込んでいるかのような演奏となっている。
と言いつつも、第1楽章の終盤では、スピード感があって、畳みかけるような演奏が繰り広げられている。第2楽章は、もともとがアンニュイと言いましょうか、気だるさのようなものが感じられる音楽になっていると思えるのですが、この演奏では、弛緩するようなことはなく、たっぷりとした歌が広がっている。第3楽章では、晴れやかで伸びやかな音楽が響き渡っている。
と書いてきましたが、やはり、この演奏の白眉は最終楽章だと言えましょう。最終楽章でエネルギーを一気に爆発させています。壮麗にしてドラマティックで、めくるめく音楽世界が広がっている。更に言えば、絢爛たる音楽絵巻を見ているかのような音楽が展開されている。打楽器群の活躍がとりわけ目覚ましく、メリハリを利かせた音楽がビシバシと決まっていく。そして、終結部では猛烈なアッチェレランドを掛けながら、スリリングに音楽を閉じている。加えて、オーケストラの響きがとても色彩的であることが、この演奏の魅力を引き立ててくれています。このことが、「絢爛たる音楽絵巻」といった印象を強めているとも思える。

私としましては、全楽章を通じて熱く燃え滾って欲しかったというのが正直なところではあります。しかしながら、このようにコントラストのくっきりと付いている演奏もまた、興味深いものであると言えましょう。