クーベリック&ベルリン・フィルによるシューマンの≪春≫を聴いて

クーベリック&ベルリン・フィルによるシューマンの≪春≫(1963年録音)を聴いてみました。
この時期、クーベリックはベルリン・フィルとシューマンの交響曲全集を完成させていますが、これは、この中の1枚となります。

覇気が漲っていて、豊かな生命力が感じられる、充実感いっぱいな演奏であります。
誠実で端正な音楽づくりをベースとしながら、ズシリとした手応えを感じさせてくれる演奏を繰り広げてくれている。そのうえで、明快で、晴れやかで、輝かしい。その様子は、まさに春にピッタリ。更には、適度にドラマティックで、ロマンティックな雰囲気も充分。音楽する喜びを謳歌しているようなところが感じられ、聴く側も、その喜びを共有できるような演奏だとも言いたい。
しかも、充分に音楽がうねっている。シューマンらしい熱狂にも不足はない。そして、力感に溢れていながら、必要十分な重厚感が備わっていて、壮麗な音楽となっている。
こういったことは、クーベリックの音楽性と、ベルリン・フィルの特質とが手を結んだ、幸福な成果であると言えましょう。
クーベリックは、この10数年後に、バイエルン放送響とシューマンの交響曲全集を制作していますが、そこでは、もう少し凝縮度の高い演奏を繰り広げてくれています。そこへいくと、このベルリン・フィル盤は、豊麗で、明朗な演奏となっているように思えます。それぞれに、異なった味わいを楽しむことができるのが、嬉しいところ。

聴き応え十分で、しかも、聴いていて心が弾んでくる、素敵な演奏であります。