リヒター&イギリス室内管によるヘンデルの≪王宮の花火の音楽≫他を聴いて

リヒター&イギリス室内管によるヘンデルの≪王宮の花火の音楽≫と2つの合奏体のための協奏曲第2,3番(1973年1月 録音)を聴いてみました。

リヒターがイギリス室内管を指揮しての録音はとても珍しく、おそらく当盤のみなのではないでしょうか。と言いつつも、≪メサイア≫(英語版)の録音ではロンドン・フィルと組んだリヒター。
ヘンデルは、ドイツ生まれではあるものの、イギリスで長年活躍し、イギリスに帰化しています。そのようなこともあって、ヘンデルに対して自国の作曲家のような愛着を抱いているイギリス人も多いとのこと。更には、イギリスには、確乎とした「ヘンデル演奏の伝統」のようなものが育まれているとも言う。そのあたりを踏まえて、ヘンデルの作品の録音はイギリスのオーケストラと、というのがリヒターの方針だったのでありましょう。 更に言えば、ロンドン・フィルとの≪メサイア≫の録音が1972年11月と1973年6月に為されているということで、当盤との録音時期が近いことも、とても興味深いところであります。

さて、そのような当盤でありますが、リヒターらしい荘重さの感じられるヘンデル演奏となっています。それでいて、ミュンヘンの手兵を相手にした時よりも、軽やかさのようなものが加えられているように思えます。ヘンデルならではの流麗さが感じられる。そして、輝かしくて、煌びやかでもある。
一語一句をおろそかにしない音楽づくりを基調としている演奏ぶり。そのうえで、音楽が生き生きと弾んでいる。伸びやかに息づいている。
そんなこんなによって、とても立派で充実していて、かつ、誠に魅惑的な形で、ヘンデルの音楽世界が目の前に広がってゆく。そのような光景を見る思いがします。

なんとも素晴らしい演奏であります。