ギーレン&南西ドイツ放送響によるツェムリンスキーの≪抒情交響曲≫を聴いて
ギーレン&南西ドイツ放送響によるツェムリンスキーの≪抒情交響曲≫(1994年録音)を聴いてみました。
ギーレンならではの、克明にして、精緻な演奏が繰り広げられています。明晰にして、精妙であり、なおかつ、必要十分にドラマティックな演奏となってもいる。
ツェムリンスキー(1871-1942)が1923年に作曲した作品であり、後期ロマン派の残照、といった風情を持っている音楽でありますが、ギーレンによる演奏では、耽美的に傾くようなことはありません。それよりももっと、キリっとした佇まいをした音楽となっている。
とは言いつつも、十分にロマンティックでもあります。それは、「毅然としたロマンティシズム」とでも呼べるようなもの。そこからは凛々しさが滲み出てくるかのよう。
そのうえで、底光りするような絢爛さが備わっている。虚勢を張るようなことが一切ないものの、劇性に富んでもいる。そして、音楽がシッカリとうねっている。
更には、クリアな響きでありつつも、色彩の鮮やかな演奏となっている。このことは特に、第5,6楽章での演奏において顕著。
そのようなこともあって、後期ロマン派の作品ならではの色合いを湛えた音楽が鳴り響くこととなっています。
しかも、輪郭線のクッキリとした演奏となっていて、見通しが頗る良い。そして、音楽が決してベトつくようなことがない。
ギーレンの魅力と、作品の魅力の双方を堪能することのできる、素敵な演奏であります。