アンドラーシュ・シフ&ドホナーニ&ウィーン・フィルによるドヴォルザークのピアノ協奏曲を聴いて

アンドラーシュ・シフ&ドホナーニ&ウィーン・フィルによるドヴォルザークのピアノ協奏曲(1986年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

ハンガリーを由来に持つピアニストと指揮者によるドヴォルザーク。セルにしても、ケルテスにしてもそうですが、ハンガリーの演奏家は、隣国のチェコの作曲であるドヴォルザークへ深い共感を示しながら、素晴らしい演奏を繰り広げることが多い。
さて、ここでの演奏でありますが、凛としていて、かつ、端正なものとなっています。そして、頗る純度の高い音楽が奏で上げられている。とりわけ、シフのピアノは、とても清冽なものとなっています。
それでいて、十分に情熱的であり、情感豊かな演奏が展開されています。ドヴォルザークならではの、ノスタルジックな感興にも不足はない。
そのうえで、息遣いがとても豊か。逞しい生命力を宿している演奏となっています。それは、この作品への強い愛着を裏付けにしたものだと言えそう。
更には、ピアノも指揮も、とても真摯な演奏ぶりが示されています。そして、夾雑物が一切含まれていないようなピュアな音楽が鳴り響くこととなっている。
そのような2人に対して、ウィーン・フィルはここでも、艶やかにして、柔らかみを帯びた美音を提供していて、この演奏を魅力的なものにしてくれています。
そんなこんなによって、音楽が示してくれている佇まいにおいても、響きにおいても、とても美しいものとなっている。

あまりメジャーとは言えないこのピアノ協奏曲を、とても魅力的な音楽として描き上げてくれている演奏。
多くの音楽愛好家に聴いてもらいたい、素敵な演奏であります。