トスカニーニ&NBC響によるムソルグスキーの≪展覧会の絵≫を聴いて

トスカニーニ&NBC響によるムソルグスキーの≪展覧会の絵≫(1953年録音)を聴いてみました。
トスカニーニならではの、毅然としていて、かつ、鮮烈な演奏が繰り広げられています。
しかも、頗る明快な音楽が鳴り響いている。音の粒がクッキリとしていて、音がキリッと立っています。
そのうえで、エネルギッシュでドラマティック。熱い血潮を滾らせるがごとく、体温の高い演奏になっている。そう、巧緻でありながら、音楽する熱狂に溢れた演奏となっているのであります。
整然としていつつ、激情的で刺激的な演奏。トスカニーニによる演奏によく見ることのできる、アポロ的でありつつもディオニソス的でもある、といった性格が、この演奏からもハッキリと窺うことができます。
更に言えば、「キエフの大門」において顕著なのですが、音楽の大伽藍と呼びたくなるほどの壮麗なる音楽世界が、至る所で築き上げられてゆく。その様は、まさに壮観。
また、「ビドロ」において象徴的であるように、とても切迫感の強い音楽が奏で上げられてもいる。
胸のすくような痛快さを備えていつつ、表現の幅が広くて、スケールの大きさも感じられる演奏。しかも、それらが、決して大袈裟な形で表されている訳ではない。作品の枠からはみ出すようなこともない。頗る自然に描き上げられている。その辺りに、トスカニーニの指揮者としての「人品の大きさ」のようなものが感じられる。
トスカニーニの美質が遺憾なく発揮されている、なんとも見事な、そして、頗る魅力的な演奏であります。





