カラヤン&ベルリン・フィルによるワーグナーの≪タンホイザー≫序曲(EMI盤・1974年録音)を聴いて
カラヤン&ベルリン・フィルによるワーグナーの≪タンホイザー≫序曲(1974年録音)を聴いてみました。
パリ版が採用されており、序曲からヴェーヌスベルクの音楽へと流れ込んでいきます。
ここでの演奏はと言いますと、カラヤン美学の結晶を見る、といった思いを抱くものとなっています。この時期、カラヤンはEMIにLP2枚分のワーグナーの序曲や前奏曲を録音しているのですが、その中でもこの≪タンホイザー≫は、白眉だと言える演奏だと看做しております。
それにしましても、なんと流麗な演奏なのでありましょう。音楽はどこまでも滑らか。そして、美麗を極めている。それでいて、うねりながら音楽は突き進んでゆく。それはもう、実に豊饒な音楽が展開されているのであります。
しかも、ドラマティックにして、ロマンティックな音楽となっている。頗る甘美でもある。
極めつけは、序曲からヴェーヌスベルクの音楽へと転換してゆく場面でありましょう。官能的な妖艶さを伴った、鮮烈な音楽が鳴り響いているのであります。逞しい生命力を宿した音楽が、ムクムクと沸き上がってきては、次から次と押し寄せてくる。それはもう、目くるめくような音楽となっている。聴いていて圧倒され、そして、恍惚としてくる。
これはもう、圧巻の演奏だと言えましょう。カラヤンの至芸を見る思いがする。
いやはや、惚れ惚れするほどに素晴らしい演奏であります。